意外に多いぎっくり背中について
突然襲ってくる腰の痛みは俗に言う、「ぎっくり腰」ですが、実は突然背中が痛くなる「ぎっくり背中」という症状になる方も意外と多くいらっしゃいます。
そこで今回は、ぎっくり背中の原因と対策方法について詳しく解説していきます。
ぎっくり背中とは病名ではなく、急激に背中の痛みが出た症状の総称をいいます。
そのため、明確にどの場所が原因というものではなく、背部や肩甲骨に付着している筋肉の筋繊維や、筋肉を包んでいる筋膜の微細損傷を起こして痛みを生じることが多いです。
下記のような症状がある場合は、ぎっくり背中の疑いがあります。
◯動くと腰から背中が痛い
◯姿勢を保つのがつらい
◯息を大きく吸うと背中が痛む
◯背中の一部分を押すと痛む
◯腕を上げると背中が痛む
◯運動後、背中が痛くなる
◯朝起きると、急に背中が痛む
◯背中に電気が走るような痛みが出た
◯上を向くと背中が痛い
ある特定の動きをしたときに背中の違和感や痛みを感じることが特徴です。
基本的には3日〜7日ほどで症状はなくなることが多いですが、動かなくても激しい痛みがある、ズキズキと疼くような痛みがある場合は筋肉・筋膜以外が原因になっている可能性があります。
そのため、痛みが改善しない場合は早期に病院を受診することをお勧めします。
ぎっくり背中はある日突然襲ってくる症状ですが、きっかけになりやすい行動の一例をご紹介します。
①身体をいきなり捻る
身体をいきなり捻る動作は背骨に大きな負荷がかかります。ぎっくり背中の場合は背骨の真ん中にある胸椎の動きが悪くなり、可動域を超える捻りが生じた時に起こることがあります。胸椎の構造上、捻りの動きが大きい関節ですが、座っている最中にいきなり身体を捻ることは避けるようにしましょう。
②重いものを持つ
重いものを持つときは荷物を落とさないように背中の筋群が伸ばされながら働きます。(伸張性収縮と呼びます)
筋肉が引き伸ばされながらの収縮は最も筋力が出る反面、必要以上の負荷がかかってぎっくり背中が起きやすくなるため注意が必要です。重いものを持つときは背骨を丸めずに、体幹や股関節の筋肉を使えるようにしましょう。
③長時間同じ姿勢を取る
長時間同じ姿勢を取っていると、背中の筋肉が持続的に収縮を起こして固まってきます。
その状態でいきなり動かすと、必要以上の負荷がかかってぎっくり背中が起こりやすくなります。
30分に1回くらいのペースで姿勢を変えたり、こまめに休憩を取るように心がけることが大切です。
④過度なトレーニングを行う
意外に多いのが、トレーニングのしすぎで起こるというものです。
特に、ウォーミングアップをあまり行わないまま負荷の高いトレーニングを行うと、ぎっくり背中を起こしやすくなります。
フォームが崩れている場合は負荷の設定が高すぎる可能性が高いので、身体レベルに合わせた負荷でトレーニングを行いましょう。
ぎっくり背中は突発的に起きるため原因の特定は難しいですが、最大の原因は姿勢不良にあります。
良い姿勢は、首の部分は反り、胸の部分が丸く、腰の部分が反っているゆるやかなS字を描いた背骨ですが、ぎっくり背中になる方の多くが、首から腰にかけてアーチのように丸まっていたり、逆に曲線がなく真っ直ぐになっていることが特徴的です。
このような不良姿勢になっている根本原因は1人1人異なりますが、特に代表的なものは下記になります。
①正常ではない呼吸パターンがある
姿勢が悪くなっている方の多くは呼吸が乱れている特徴があります。
日常生活では基本的に腹式呼吸が理想ですが、腹式呼吸ができずに胸を膨らませる胸式呼吸の傾向があります。
長時間のデスクワークやストレス、その他様々な要因によって呼吸は乱れてくるため、正しい呼吸を行うことで姿勢が改善されやすくなります。
正しい呼吸の習得についてはこちらの動画をご参考ください。
②インナーマッスルの弱化がある
より深い部分についている筋肉が使えていないことも姿勢不良を起こす要因です。
背部にある脊柱起立筋(最長筋、腸肋筋、棘筋)は非常に大きな筋肉でパワーが出る一方で、背骨の小さい動きや姿勢を安定させるような役割は、深部にある多裂筋と呼ばれる筋肉や、その他のインナーマッスルが担っています。
そのため、やみくもに負荷を高めるトレーニングではなく、インナーマッスルを使えるようなエクササイズも必要になります。
③肩甲骨の可動性が低下している
肩甲骨が硬くなると背骨にも影響を及ぼして、上記のような姿勢不良に繋がってきます。
いわゆる猫背の姿勢は、肩甲骨が外に開いている(外転)状態ですので、内側に寄せる(内転)動きが硬くなりやすいです。
四十肩・五十肩も肩甲骨が原因であることが多いので、しっかりと動かせる状態にすることが大切です。
④胸椎の可動性が低下している
背骨は上から頚椎・胸椎・腰椎というように分かれていますが、胸椎の可動性が低下することで姿勢不良は起こりやすくなります。特に背骨を反る伸展という動きや、捻る回旋の動きが悪くなってくると姿勢不良に繋がります。
ぎっくり背中になってしまったときは、急性期と慢性期で対処が異なります。
◯急性期の場合
・冷却療法(冷やす)
炎症が出ているときはアイシングによって炎症を抑えましょう。背中のアイシングはアイスパックを使うことをお勧めします。
うつ伏せの姿勢で15〜20分間冷やします。また、炎症が出ているときは決して無理に動かさずに安静にすることで炎症を早期に抑えることが大切です。
また、寝るときに痛みが強く出る場合は、横向きで背中を丸くして寝たり、クッションを抱えて寝ると緩和することがあります
◯慢性期の場合
・温熱療法(温める)
炎症がおさまったら動きを良くするために、積極的に温めていきましょう。
背中の筋肉や筋膜が固まってしまうと慢性的な痛みに繋がりますので、お風呂に入ったり、ホットパックを行うことが効果的です。
・運動療法(運動)
慢性期に入ったら、痛みのない範囲で徐々に動かしていきます。痛みが解消したと思って動かずに放置していると、再発や慢性化のリスクが高まるため、積極的に運動をすることで再発を予防することが大切です。
トレーニングとストレッチ
ぎっくり背中を予防するためのトレーニングとストレッチをご紹介します。
運動の際は必ず無理のない範囲で行うようにしてください。
①キャットバック
主に胸椎の動きを良くするストレッチになります。
腰が反ると痛い場合、胸椎を反る(伸展)の動きが固まっている可能性が高いです。
そのため、しっかりと動かしましょう。
②ソラシックローテーション
主に胸椎の動きを良くするストレッチになります。
この種目は胸椎の回旋を行っていますが、回旋の動きが良くなることで先述した胸椎を反る(伸展)の動きも高めることができます。
③リブストレッチ
胸椎および肋骨のストレッチです。
肋骨周りが硬くなることで背骨も硬くなるためしっかりと伸ばしましょう。
④コブラ
肩甲骨のトレーニングです。
胸椎の動きを良くするためには隣接している肩甲骨の動きを良くすることがポイントです。
腰に力が入らない範囲で肩甲骨をしっかり寄せるようにしてみてください。
⑤オーバーヘッドリーチ
腹部のインナーマッスル強化のトレーニングになります。
腰が浮かないように行ってください。
⑥デッドバグ
腹部のインナーマッスル強化のトレーニングになります。
腰が浮かないように行ってください。
⑦プッシュアップ
いわゆる腕立てです。
手の幅を広げると大胸筋、手の幅を狭めると上腕三頭筋や広背筋を鍛えることができます。
ぎっくり背中の予防には、両方の幅で行えるようにして、慣れたらつま先で支えながら行ってください。
今回は突然背中が痛くなるぎっくり背中について詳しく解説をしました。
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